4月6日(隠されていた素晴らしい裁判例を発見)

 IDとパスワードが分からなくなって,1年くらい使えないままになっていた判例秘書を2か月ほど前に,IDとパスワードが記載された資料が見付かって,また使用可能となったが,その資料がまた他の書類の間に紛れ込んでしまったのか,行方不明となっていたところ,昨晩,見付かったので,「脳脊髄液減少症」というキーワードを入力して,最近の裁判例の検索をしてみたら,さいたま地裁平成26年12月4日判決,平成23年(ワ)第2613号(裁判官野村高弘)が出てきた。
 この判決は,判例誌などには不登載。
 全文を読んで,裁判官がこの事件を一生懸命審理され,ご自身の頭で考えたその検討結果に基づいて,その良心に従って判断された,これぞ裁判官による判断といえるすばらしい判決といえるものであることが分かった。
 また,この判決の理由中の説明から,この事件の原告は山王病院で診療を受けた患者さんであるところ,原告側からも医師の意見書が提出され,裁判所は,当事者双方の意見書を作成した各医師の証人尋問を採用したところ,被告側が提出した意見書を作成した医師(おそらく例の先生なのであろう)は証拠調べ期日に出頭せず,原告側が提出した意見書を作成した医師だけが出頭して尋問が実施されたということも判明した。
 「B意見書の所見は,針孔からの髄液漏れの可能性を指摘するものの,一般論にすぎず,本件の原告のRIシンチ画像における髄液漏れが針孔によるものであることの理由を示していない。
 原告のRIシンチ画像については,本件証拠上,髄液漏れの直接所見であるとするA医師の診断を特に疑う理由がないというべきである。」
 等々,一つ一つの問題について,丁寧な説明と,極めて常識的な判断が示されている。
 結論は,当然のこととして,脳脊髄液減少症の発症を認め,症状固定の時期についても原告主張の時期と認めたもの。
 このような重要な裁判例が,なぜ隠されてしまっていたのであろうか。
 「判例秘書」への登載がなければ,当事者以外には知らされずに終ってしまうところであった。
 以前このブログに書いたことがあるが,私が代理人として頑張った年金記録訂正請求訴訟の一,二審の両判決も,判例時報社と判例タイムズ社に写しを送り,判例時報社からは,登載した時点で登載誌を送らせていただきますなどと書かれたお礼状をいただいて,登載されることになったのだろうと楽しみにしていたところ,ついに両誌には登載されず仕舞いになってしまい,恐らくどこかから登載まかりならぬとの働きかけがあったのだろうと今でも考えているのであるが,そのうちLICの方に判決の写しをお渡ししておこうかと考えているところ。
 ついでに,今朝,「年金記録訂正」というキーワードで判例秘書の判例索引をしてみたら,昨年3月の厚生年金法の改正法施行前の第三者委員会時代の確認請求却下事案について,当該却下処分は違法と判断して,その処分の取消しを認めた大阪地裁平成25年9月25日の判決(裁判長裁判官  西田隆裕,裁判官斗谷匡志,裁判官栢分宏和)が登載されていた。これも隠されていた裁判例
 「判例秘書」の使用料は,月額1万5750円と高額だが,当局によって隠された裁判例を見つけることができるので,とても役に立つということを改めて認識した次第。

 なお,先のさいたま地裁の担当裁判官のご経歴を調べてみたら,
 38期
 平成22.4.1から25.5.1 東京高裁判事
   25.5.2から27.10.5 さいたま地家裁部総括
   27.10.6から 横浜地家裁小田原支部
と記載されていた。

 只今起案中の相手方の最終準備書面に対する反論の準備書面の中に,さいたま地裁の判決のことも書き加えて,判決の写しを参考資料として提出することにしたいと考えているところ。先日理由書を提出した事件についても,最高裁の担当小法廷から訴訟記録到着通知が届いたら,理由書の補充書の中にこの判決のことも書き加えておかなければ・・・。

 一人ぼっちの高齢の宅弁でも,努力と工夫次第で,いろいろと新しい発見があります。